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2026.07.10

Galileo Galilei 尾崎雄貴さん×紺野アキラ先生スペシャル対談!!

動物

TVアニメ『クジマ歌えば家ほろろ』のオープニングテーマ『木漏れ日坂』を手がけたGalileo Galileiの尾崎雄貴(Vo,G)と、原作者・紺野アキラの対談が実現! 『クジマ歌えば家ほろろ』と『木漏れ日坂』の制作エピソードはもちろん、創作に対するスタンスやお互いに聞きたいことなどについて、たっぷり語り合ってもらいました。

●Galileo Galilei

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尾崎雄貴(Vo, G)、尾崎和樹(Dr.)らを中心に2007年に北海道・稚内にて結成されたロックバンド。
『青い栞』『サークルゲーム』をはじめ数々のアニメ主題歌を手掛ける。
最新シングルTVアニメ『クジマ歌えば家ほろろ』OPテーマ「木漏れ日坂」が発売中。

●紺野アキラ

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3月30日生まれ、血液型O型。福岡県出身。2017年6月『知らない海の底』で、第80回新人コミック大賞入選。同作にてゲッサン本誌デビュー。
初連載となる『クジマ歌えば家ほろろ』は大きな話題を呼び、全5巻で完結。そして、この度待望のアニメ化。

――まずは紺野先生がGalileo Galileiの音楽と出会ったときの状況、エピソードを教えてもらえますか?

紺野アキラ:中学生の時にテレビで『ハマナスの花』のMVを見たのが最初です。かっこいいなと思っていたら母親がいつのまにかCD(ミニアルバム『雨のちガリレオ』)を買っていて「この『Monday7s』って曲いいよ」と教えてくれてCDを聞き始めました。『雨のちガリレオ』『ハマナスの花』『パレード』は買ってもらったCDプレイヤーにセットして聞くのが楽しかった記憶があり、思い出深いです。

尾崎雄貴:『Monday7s』懐かしいですね! 最近、初期に書いてずっと演奏していなかった曲をライブでやってみようモードなので、今度セトリに入れてみようかなと思いました。その時は、紺野先生のために福岡公演でやります! お母さんがCDを買っていたとのことですが、実際、Galileo Galileiに対してそういう声もたくさんあって。「親の影響で聴いていたけど、ライブに行ける年齢になる頃には活動終了していた」という方々が、再始動後のライブによく来てくれるんです。

紺野:まさに私もそうでした。

尾崎:誰かの人生のそばにいれた感覚があって、そういうのは本当に嬉しいです。


――特に思い入れがある楽曲は?

紺野:『Monday7s』はとにかく月曜日が嫌なときに聞いてました。憂鬱な気持ちも分かってくれていて、それを飛ばすような明るさがどうでもよくさせてくれて好きです。『フラッピー』はかわいくて、「フラッピーってなんなんだろう?」と考える時間が楽しくて。聴く側の年齢や状況によってフラッピー像が変化していくのかなと思います。今の私のなかのフラッピーは、小さくてかわいい虫みたいなやつです(笑)。『鳥と鳥』も映画を見たような気分になれてとても好きです。主人公に感情移入して最後の「さよならを言う」のところは自分を刺すような声に心臓が痛くなります。あと『色彩』は、自分から見たあなたもその周りの景色もキラキラしているのに、自分のことを歌うときだけ黒くて小さくて閉鎖的なものになるところが好きで。『カメカメレオン』は、歌詞は暗くて孤独感があるのに音楽は明るいところが皮肉っぽくて、「僕を見て!ほっといて!」という歌詞が良いなあと思います。『ロックスター』『Jonathan』『プレイ!』『MANSTER』は聞くとテンションが上がります。……一気に話してしまいました、すいません。

尾崎:うれしいです! おもしろいことに、フラッピーがいったい何だったのか、自分でもまったく思い出せないんですよね。今の自分があの頃の曲を振り返って思うのは、大人になるにつれて失うものに、失う前から気づいていたのかなと……。それは純真性という言葉で片付けられるものではなくて、結局今でも失わず持ち続けているものでもあるんですけどね。ちなみに今の自分の中のフラッピーは「クジマ」の小さい頃(四足歩行)のような感じです(笑)。あと『カメカメレオン』を気に入ってくださったのはすごく嬉しいです! メンバーの岡崎くんと和樹がめちゃくちゃ気に入ってる曲なので。『色彩』についても、リリースの際にインタビューなど受けましたが、紺野先生の感想は初めて言ってもらえる部分です。実際、僕の相手に対する感覚がその通りなので、言い当てられた気持ちです。


―――紺野先生がGalileo Galileiのライブをご覧になったときに感じたこと、印象に残ったことは?

紺野:『ヴァルハラ』のイントロをライブで聴いたら、ベース、ドラム、ギターと音が増えるにつれて、赤黒い道と大きい扉みたいなものがイメージで見えるような演奏で、すごい!と思いました。それとファンの方は穏やかそうなんですが、すごく楽しんでいるのが伝わってきて、幸せ空間だなと。私も楽しくて幸せな気持ちになりました。『SPIN!』ですずめちゃんペンライトを振れたのも楽しかったです。

尾崎:ありがとうございます! 『ヴァルハラ』はまさに、その「すごい!」が本当にシンプルに欲しくて書いた曲ですね(笑)。


――『クジマ歌えば家ほろろ』を執筆するときも、Galileo Galileiの楽曲を聴かれていたそうですね。『クジマ~』の物語、世界観にも彼らの楽曲が影響しているのでしょうか?

紺野:昔から聞いているので、空気感や温度感は私の絵や漫画に染み込んでいるのかなと思います。『クジマ~』は自分の中学の頃のことを思い出しながら描いていたのですが、中学生の頃、学校が休みの日にGalileo Galileiさんの曲を聞きながら絵を描いていたので、その時の空気は出ていると思っています。『老人と海』は特に『クジマ~』を描いている時に記憶に残っている曲ですね。


――尾崎さんは『クジマ歌えば家ほろろ』を読んで、どんなことを感じましたか?

尾崎:絵柄や作品に漂う雰囲気、景色、クジマという生物に対して、不思議な"ぼくも知っている"という既視感を覚えました。僕は学生時代、地元の稚内に暮らしながら、毎日が退屈で「なにか非現実的なことが起こればいいのに」と考えていて。そのなにかがこの作品に存在していて、惹きつけられました。


――なるほど。TVアニメ『クジマ歌えば家ほろろ』のオープニングテーマはGalileo Galileiの『木漏れ日坂』。この楽曲の制作のプロセスを教えてもらえますか?

尾崎:原作を読ませていただき、読みながらすぐに僕の頭の中に情景とテーマの原型がむくむく湧き上がってきたので、アコギを手に取ってメロディーと歌詞を書き始めました。それから、この作品を生み出した紺野先生というアーティストのことを想いながら曲を形作っていきました。歌詞でいちばん最初に出てきたのは「なりたい姿になれない僕ら」という言葉です。サウンドに関しては、懐かしさを表現できるように、しばらく聴いていなかった好きだった時代の邦楽をメンバーと一緒に聴きました。崇拝するロックバンド“くるり”を再び研究する機会になりましたね。あとは紺野先生の絵のタッチをどうやったらサウンドで表現できるかなということを考えながら、匂いや空気を大事にレコーディングしました。
 紺野先生が僕らの『老人と海』のイメージと『クジマ~』を重ねてくれていたことも伺っていて。レーベルのA&Rの方からはノスタルジーとか土臭さみたいな希望をいただきましたが、僕らを信頼してもらっているのか、紺野先生やアニメのスタッフの皆さんから、それ以外のこまかい指定などはほとんどなかったと記憶しています。僕は原作を通して、紺野先生と会話をしていたような感覚だったんですよ。ミュージシャン同士が楽曲や音で通じ合うのと同じなのかもしれません。


――紺野先生は『木漏れ日坂』を聴いてどう思われましたか?

紺野:まず冒頭の「なりたい姿に なれない僕ら」という歌詞に自分の悩んでることなどを重ねて。「僕ら」と言ってくれてることで「みんなそうなのか」と安心したりしました。“なれる自分”は限られていて、それを受け入れるといいますか。憧れへの距離感が、切ないけど心地よく感じられるような曲だと思いました。それと最後の「夕闇坂」から「手を振って」までの音が影絵みたいなイメージになるところもすごく好きです。それまでの光と風があるようなメロディーから場面が変わるようで、その対比が最後のノスタルジックな空気を増幅させていてかっこいいです。『鳥と鳥』も影絵のようなイメージで聞いていて、他のインタビューでもおっしゃってましたが、歌詞も含めて私も同じ雰囲気を感じました。


――アニメ『クジマ歌えば家ほろろ』のオープニングをご覧になって、どう思われましたか?

紺野:最初のシーンでクジマが空を見上げるところは曲を聞いてイメージした想像通りだと思いました。サビでは定点でキャラクターだけ動いていたり、最後の音に合わせて風景の絵が流れたり。映像ならではの表現の仕方に感動しました。

尾崎:こんなことを言うのもなんですが、すでに僕の頭の中でオープニングは出来上がっていたので、そうそうこれこれ!って感じでした(笑)。

紺野:そう言えば『木漏れ日坂』のMV、鹿の角で『パレード』のジャケットを思い出しました。MVのコンセプトをお聞きしてもいいですか?

尾崎:今回のMVも『アマデウス』を手掛けてくれた松永監督にお願いしました。もともとGalileo Galileiを好きで聴いてくれていた方なので、ファンの感覚に寄り添ったものになったらいいなと。僕からは歌詞の意味や”僕”と”渡り鳥”の二つの視点の意味など、ぼんやりしたイメージだけを伝えて、あとは松永監督の世界観に委ねたんです。結果的に昔のGalileo Galileiをどこか彷彿とさせるようなシーンもあり、過去と今が不思議と繋がるような感覚のある映像になっているんじゃないかと思います。鹿の角は僕から提案してみました。『クジマ~』に出会って『木漏れ日坂』を書いていて、真っ先に思い出したのが『パレード』だったからかもしれません。
 僕からも紺野先生に聞きたいことがあって。漫画を描くにあたって、登場人物やストーリーの起点など、紺野先生の頭と心の中で、どのようにカタチになっていくのかをとても知りたいです。物語の1話目を「描き始めよう」と筆が動く瞬間ってどんな感じなのかなというのも気になります。自分の話になりますけど、曲の中で作った世界や物語は、ライブで演奏し続けていても、いまだに明瞭になっていないものも沢山あります。そして曲を書いてから10年経ってやっと「ああ、これはこういう物語だったのか」と気づくことも。後付けでどうにかなる楽曲と違って、漫画に描く物語は1話目――曲でいうと歌い出し――の時点で、ある程度明瞭じゃないといけないのかなと予想しているのですが、そのあたりはどうなんでしょうか?

紺野:まず描きたいシーンが映像として頭に浮かぶのが最初だと思います。『クジマ~』だと自動販売機の小銭を漁っている変な生き物を描こうが最初です。今の『クジマ~』になる前は、冬が寒くて家を買おうとしてる生き物という設定だったんです。その後にもう少し引っかかるものが欲しいなと思っているときに、川で休む鴨を見て変な生き物を渡り鳥にしようと決めました。私はテーマを最初に決めて描くのが苦手なので、物語の細かい部分を描いているうちに自分の持っている価値観と合わさってだんだんテーマが決まっていくと思っています。

尾崎:僕が曲や歌詞を書く、あるいはアルバムを完成させるときのプロセスや感覚にすごく似ていて、よく分かります。余談ですが僕の家(スタジオ)の近くにも『クジマ~』の作中に出てくるような川があって、狐が散歩していたり、鴨の夫婦がよく泳いでいます(笑)。

紺野:私からも、歌詞やメロディを作るときにまず何から始めるのかもお聞きしたいです。『木漏れ日坂』の「人目気にせず倒れ込む」から「なんでそこで寝ているの なにかを待ってるの?」まではその場面をはっきり想像できるような歌詞だと思ったのですが、どの段階でこの歌詞が入ったのか、もしかして実体験なのかなと、とても気になりました。

尾崎:その歌詞の部分は、自分の実体験に基づいていて。家のすぐ向かいに小さな公園があって、制作で行き詰まるとそこのベンチとか砂場の縁に座ってぼーっとする不審者になるのですが(笑)、息子の公園友達たちがよく話しかけてくるんです。「〇〇くんのパパ、なにしてるの?」って。ちょっと考えてから、「ね、なにしてんだろね?」って答えるしかなくて、そのなかの女の子から「元気だそう!」ってお花をのせた砂のケーキを振る舞ってもらいました。その子が花を摘んでいたのが、公園のとなりのお婆さんのお庭で、なぜか僕が怒られました(笑)。

紺野:そうなんですね(笑)曲のイメージが広がるお話が聞けて嬉しいです!


――ここからはお二人の創作への向き合い方について聞かせてください。漫画を描く、音楽を作るときにいちばん大切にしてることは?

紺野:物語の中で登場人物の状況や心情の変化を描くことだと思います。一貫してやっていることはそれかなと。あとは光や温度を感じられる画面作りをすることですね。『クジマ~』では冬の彩度の低い感じと日の緩やかな暖かさを意識して描いていました。

尾崎:さきほど紺野先生から「CDを買ってもらってずっと聴いていました」というお話がありましたが、まさにその時の気持ちを忘れないようにしようと心がけています。自分が作っているものが、いろいろなバンドを人柄も含めて追いかけていた10代の頃の自分にもじっくり聴いてもらえるものなのかどうかを、いつも考えています。


――紺野さんにとって、一人で創作することの楽しさ、大変さとは?

紺野:黙々と背景やカケアミを描いている時はすごくリラックスしているし楽しいです。アシスタントさんもいないので1人で描き上げた満足感もありますね。大変なことはやっぱり孤独感が強いこと。私にも色々なことを話せるメンバーがいてくれたらなと思います。


――では、尾崎さんにとってバンドで活動することの楽しさと、大変さとは?

尾崎:楽しさと大変さは表裏一体って感じです。音楽で感じられる喜びや体験を、メンバーと一緒に浴びる瞬間が一番楽しいですね。バンドというものを結成してから、ずっと『ONE PIECE』の主人公のような気持ちで生きてこれています(笑)。もちろんその分、みんな全身で捨て身で向かってくるときがあるので、人って難しいなあって思うこともあります。


――創作を続けていくための条件とは何だと思いますか?

尾崎:創作物の受け手、つまりリスナーの中に“自分に似た誰かがいるはずだ”と信じ込むことです。デビュー直後に苦しんでいた自分が解放されたのは、それができるようになってからなので。

紺野:月並みな答えですが、自分が体調を崩しがちなので健康であることです。身体的にも精神的にも健康でないとインプットもアウトプットもままならないなと思います。


――漫画や音楽など、表現に関わることを目指している方々にメッセージを送るとしたら、どんなことを言いたいですか?

紺野:私自身まだ人に何か言える立場ではないと思うのですが、興味の幅を広げることは大事だと思います。絵を見たり本を読んだり音楽を聞いたりして好きなものを増やすと作品にも繋がっていくと思うので、私もこれからもっと色んな物に触れていきたいと思っています。

尾崎:すべては後付け、こじつけでいい! 結果は求めるな! 求めているうちは向こうからはこない! さぁ書け!描け!鳴らせ!歌え! です(笑)。


――ありがとうございます! 最後に『クジマ~』の気に入っているシーン、好きなシーンがあれば教えてください。

紺野:5話で真琴ちゃんが言う「クジマはクジマってことで」というセリフはこの作品のクジマのあり方を表している一言で気に入っています。それとお花見の回のクジマとアラタの「キレイだねえ!」「うん!」というシーンは、極力台詞を減らしてアラタの感情の変化を描けたのではないかなぁと思っています。

尾崎:たくさんありすぎるので、ばーっと話しますね! まずは2巻の10話、兄がぽろっとクジマを家族だと認めるような発言をしちゃってクジマが喜ぶシーン。1巻の冒頭、アラタくんがクジマを発見する出会いのシーンも好きで、あの淡い絵柄のタッチも相まって一気に引き込まれます。クリスマスケーキを前にしたクジマとアラタくんの輝くお目目が尊いし、クジマの咀嚼音が、クチバシなのにモグモグなのが好き。 アラタくんがもらったクリスマスプレゼントがきのこ栽培セットなのも面白くて、次の話で伏線回収するのかなと思いました(笑)。3巻のアラタくんが学校に忘れた冬休みの宿題を、クジマと一緒に取りにいく回も最高。 4巻のマコトちゃんとクジマのバレンタインチョコレート作り回も大好きです。 とにかく、自分もこの作品の日常に混ざれたらなあと思ってしまいます。 父方の実家から帰宅した時の「家の匂いがする」ってクジマのセリフもすごく好きでした。

紺野:細かいところまでありがとうございます!すごく嬉しいです…!

インタビュー/森 朋之